KRAS

国内ニュース:RAS遺伝子の働きを止める薬剤の開発に光明

2022年3月5日

がんゲノム医療では、細胞増殖の暴走を引き起こす原因遺伝子を特定し、その働きを止める薬剤を使用することによって、がんを治療しています。膵臓がんでがんの原因になっている遺伝子を調べると、その多くがRAS(ラス)と呼ばれる遺伝子です。残念ながら、このラスの働きを止める薬剤は一部を除いて作られていません。しかし、国立がん研究センター研究所と米国のグループがラス遺伝子攻略の糸口となる発見をしています。

◆膵臓がんのゲノム医療の実態

 がんは正常な遺伝子が変異して起こる病気です。膵臓がんもその例外ではありません。がんゲノム医療は、がん化の原因となる遺伝子変異を特定し、その変異に合った薬剤を選んで使用するという2段階で実施されます。つまり、がんゲノム医療によって膵臓がんに立ち向かうためには、原因となる遺伝子変異が正確にわかることと、その変異に見合った薬剤が存在し、使用できることが条件となります。

 膵臓がんの原因となる遺伝子変異の中で最も多いのが“KRAS(ケイラス)遺伝子変異”です。大変つらいことですが、現在KRAS遺伝子変異に有効な薬剤が膵臓がんには存在しません。KRAS遺伝子の一部の変異(G12C)が今年、日本でも承認されましたが、この変異を持つのは肺がんなどに限られており、膵臓がんにはほとんどありません。
せっかく、原因遺伝子が分かっても、治療法がない。これが残念ながら膵臓がんのゲノム医療の実態です。

◆新しいKRAS変異攻略法が見つかりました

 ところが、3月3日に、国立がん研究センター研究所分子病理分野の小林祥久研究員と米国のグループが、KRAS遺伝子変異の新しい弱点を発見、世界で最も有名な科学雑誌ネーチャーに研究成果を報告しました。

 遺伝子が機能を発揮するためには、多くの場合、DNAからmRNAに転写され、そのmRNA
自身が成熟し、ここからさらに蛋白質へと翻訳され、この蛋白質ががん細胞の増殖を促す働きをしています。これまでの治療薬の多くは、蛋白質の働きを止めるように設計されてきました。

 小林研究員らは、KRAS遺伝子のmRNAが正しく成熟するプロセス(専門的にはスプライシングといいます)を正確に行うために必要な仕組みを発見しました。この仕組みを妨害することができれば、KRASはがん遺伝子として働けないようになるはずです。

 小林研究員らは、その仕組みを妨害する薬剤の創出にも成功しました。この薬剤はがん化を起こさない正常なKRAS遺伝子の働きは妨害しないので、治療薬として使った場合に、有害な副作用も軽く済むと期待されます。

 つまりこれまで打つ手がなかった“KRAS遺伝子変異攻略”のための突破口がひらかれたことになります。

◆迅速な臨床開発が課題

 新薬の開発には多くの時間と資金がかかると言われています。有効で安全な薬剤を開発するためには当然といえます。しかし、膵臓がんの治療薬開発は緊急を要する課題です。小林研究員が創製した薬剤は核酸医薬という種類の薬剤で、これまでの新薬開発よりも短期間で開発できることが期待されます。

 薬剤の分子の設計も、コンピュータなどを駆使して、試行錯誤に要する時間を短縮する試みが活発化しています。有効性や安全性の評価も、実際に患者さんに投与する前に、がん組織を試験管内で再現して、試験的に投与するオルガノイド法という新しい手法も開発されています。

 有望な薬剤が発見されたら、一刻も早く患者さんの治療に貢献できるように、創薬の仕組み全般を見直す必要があります。そのためには我々患者も、研究者と密に連携していく必要があるといえそうです。

著者:小崎丈太郎

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